教育

1)国内および海外への専門教育機会の提供

■EEG/Epilepsy fellowship

脳神経内科、脳神経外科、小児科、精神科の専門医取得前後の若手医師を対象として、専門研修目的に脳神経内科の髙橋良輔教授のもとでEEG/Epilepsy fellowship を設置しています。これまで脳神経内科医10名、脳神経外科医3名、小児神経専門医1名が研修を受けています。今後も、i.幅広い脳波判読の研修と経験、ii.長時間ビデオ脳波モニタリングの解析、iii.てんかんの診療、iv.各種抗てんかん薬投与に関する臨床研修などの、てんかん学・臨床神経生理学の研修および研究の機会の提供を充実させていきます。また、海外へも広く同様の研修と研究の機会を積極的に提供していきます。

■EEG/Epilepsy fellowship 修了者
津田玲子 2011年6月~8月(札幌医科大学 神経内科)
井上岳司 2013年4月~2016年3月(大阪市立総合医療センター 小児科)
藤井大樹 2014年9月〜11月、2016年2月〜2017年3月(倉敷中央病院 神経内科)
吉村 元 2015年7月~9月(神戸市立医療センター中央市民病院 神経内科)
塚田剛史 2015年10月〜2016年3月(市立砺波中央病院 脳神経外科)
本多正幸   2016年4月〜2018年3月(東京大学病院 神経内科)
邉見名見子 2016年10月〜2019年3月
ーキャリア支援医として研修継続(2019年4月~2020年3月)
山中治郎   2017年1月〜3月(天理よろづ相談所病院 神経内科)
濱口敏和   2017年4月〜2019年3月(岡山旭東病院 神経内科)
迎 伸孝   2017年6月〜7月(九州大学病院 脳神経外科)
村岡範裕   2017年10月〜2018年3月(高木病院 脳神経外科)
田口智朗   2018年4月〜6月(天理よろづ相談所病院 神経内科)
塚本剛士   2018年10月〜2019年3月(滋賀医科大学附属病院 神経内科)
八木田薫   2019年1月〜3月(天理よろづ相談所病院 脳神経内科)
的場健人   2019年10月〜12月(神戸大学大学院 脳神経内科学分野)
中村 和   2020年4月〜9月(愛媛大学 脳神経外科)
永井俊行   2021年4月〜2022年3月(北里大学医学部 脳神経内科学)
姜 裕貴   2021年9月〜12月(健和会大手町病院 総合内科)
佐藤達哉   2022年5月〜8月(脳神経センター大田記念病院 脳神経内科)

■EEG/Epilepsy fellowship 修了者の感想文のご紹介

永井俊行 先生(北里大学医学部 脳神経内科学)
私は2021年4月〜2022年3月の1年間 EEG/Epilepsy Fellowshipとして研修をさせていただきました。研修中はてんかん精査目的で入院された患者の診療を中心に、てんかん外来患者の診療や頭皮上脳波の判読、長時間ビデオ脳波モニタリングや硬膜下電極を留置した患者の脳波解析を経験しました。
これまで私が勤めていた病院では紙媒体を介して脳波の判読を行なっており、検査技師が脳波検査を施行し、施行者が判読した脳波所見を医師が確認して総合判定を行うのみでした。デジタル脳波を扱い、自身の判断でモンタージュを変更したり、時定数やフィルターを設定するということはこれまでにない経験であり、自分自身で異常所見をどのように拾い上げていくか、それをどのように評価をするかという経験は、私の脳波判読技術を大いに高める非常に良い経験となりました。カンファレンスや脳波所見会で脳波波形一つ一つに注目し、議論することを経験し、これまでいかに波形の定義や意義についてしっかり考えずに脳波を判読していたことを改めて思い知らされました。
また、infra-slow、DC shiftといった超低周波帯域や超高周波帯域の脳波成分を評価するwide band EEGの重要性や意義に関しては、そもそも研修をするまでは全く知らなかった内容であったため、1年を通じて少しでも理解を深められたことは大変ありがたいことでした。
入院症例に関してもてんかん精査入院は然り、ビデオ脳波モニタリングや頭蓋内電極留置といった症例は、てんかん専門施設でないと経験できないことであり、この短期間で多くの入院症例を経験できたことは、今後てんかん診療に従事していきたい私にとって勉強になるものでした。
研修を経て私自身がもっとも感じたことは、京都大学で行われているさまざまな研究内容や他施設との合同カンファレンスに出席をさせていただき、デジタル脳波における研究内容は今後さらなる展望、発展が望める領域であるということでした。私の研修の当初の目的は、てんかん専門医に必要な知識や症例を経験し、頭皮上脳波を正確に判読できることであると考えており、研究には興味を持っていなかったのですが、今回の研修を経て当初の私の目的はあくまで通過点に過ぎず、デジタル脳波を用いた研究にも意欲的になった事は自分自身の大きな変化であったと思います。
短期間でここまで充実した経験をさせていただいた京都大学病院の先生方には本当に感謝をしております。これからも研修で学んだことを糧にてんかん診療、脳波判読を行いつつ、同じ分野に興味を抱く若手医師を積極的に勧誘、指導を行い、京都大学病院のEEG/Epilepsy Fellowshipの魅力を紹介していければと思います。

石橋はるか 先生(広島大学大学院 脳神経内科学より国内留学)
2020年から2年間、京都大学へ国内留学をさせていただきました。卒後9年目でしたが、これまではてんかん診療を十分理解できておらず、脳波も読めていないといった状態でした。
京都大学での研修は、てんかん診療で「見えていなかったものが見えるようになる」経験でした。
一つ目は脳波の判読です。病棟と外来のルーチン脳波、ビデオ脳波モニタリングと、経験したことがないくらい大量の脳波を判読しました。脳波を見慣れてくると、異常と判断すべき波形が見えるようになってきます。目立って見える波形を有意ととるか、どう解釈するかを判断しなければなりません。所見をつけ、指導医の先生にご確認いただくことで、正しい判読手順と解釈方法を学ぶことができました。脳波判読の習得には、実際の脳波を見ながら、読める人に直接教わることが一番の近道なのだと実感しました。議論の分かれる脳波もありますが、カンファレンスでの議論でより理解を深めることができました。
二つ目は、てんかん診療全般に関する考え方です。一年目は担当医として入院患者を診る機会をいただき、二年目は外来新患患者の問診と、池田教授外来の再診を見学させていただきました。京大病院の症例は難治であったり、治療が明快に決まらなかったりと、複雑な症例が多いように思います。入院や初診では特に、詳しい病歴聴取が重視されました。これまで、てんかん診療では脳波が重要だというイメージを持っていました。しかし「脳波異常がない」「脳波異常がてんかん性と確定できない」「発作様式と脳波所見が合致しない」といった症例を経験し、改めて臨床症状の重要性を感じました。検査結果のみでは診断が確定できないところが、難しいところであり、面白いところかもしれません。
最後に、コロナ禍の研修という面から感想を述べさせていただきます。コロナ流行のため、ビデオ脳波モニタリングや頭蓋内脳波の入院は減少しており、経験症例は例年よりも減ったかもしれません。ただしデメリットばかりではありませんでした。各種カンファレンスがWebでの開催となったため、勤務の都合で病院へうかがえなくとも参加できるようになりました。大部屋のように画面が見づらいということもありません。Web配信を行っていただけたおかげで、研修終了後もカンファレンスでの勉強を続けることができています。
以上簡単ですが、国内留学の感想とさせていただきます。ここでは割愛させていただきますが、研究面でも非常に学びの多い2年間でした。ご指導いただきました、池田先生をはじめとする3,5研の先生方、貴重な関わりのあった先生方へお礼申し上げます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

当講座の年次報告書にも、EEG/Epilepsy fellowship 修了者の感想文を掲載しています。

■合同症例検討会

脳神経内科、脳神経外科、小児科、放射線診断科、脳機能総合研究センター、精神科、リハビリテーション部、中央検査部が協力して、関連診療科全体で融合的に、合同症例検討会を月1回、10年以上にわたり継続して開催しています。診断や手術適応などを討議し、3次てんかん専門施設として包括的てんかん診療を行っています。近隣医療機関からの医師の参加、紹介症例も、年々増えています。また同時に日本てんかん学会認定研修施設の研修プログラムの一環として、院内・院外の若手医師に対して教育の場を提供しています。

■脳波カンファレンス等

関連大学院生に対しては、週2回の脳波カンファレンスでの脳波判読研修、外来患者・入院患者診療研修、てんかん関連研究など、教育と研究に関して多面的な取り組みを行ってきました。週1回の脳波カンファレンスとリサーチカンファレンスは英語で開催され英語を用いたプレゼンテーション能力の向上も目指しています。もう1回の脳波カンファレンスは院内検査技師・院外医師の皆様も対象にし、脳波の波形解釈の基礎から教育を行っています(参加者は30~40人)。

■専門医育成

2014年度は、日本てんかん学会てんかん専門医5名(卒業生含む)、日本臨床神経生理学会脳波領域認定医1名を輩出しました。

■学外講習会

学外においては、毎年2月に関西脳波・筋電図セミナーが若手医師・検査技師を対象に開催されており、2008年から開始しこれまで8回、事務局を担当してきました(詳細は、添付資料参照)。また各種講演会・研究会を通じても若手医師の教育に従事してきました(詳細は業績を参照)。またスタッフ2名とも、近隣医療機関での脳波カンファレンスで、脳波判読とてんかん診療に関する教育を定期的に行っております。

2)看護の院内教育の充実

関連科医師およびメディカルスタッフに対して、てんかんに関する専門的知識の教育を推進してきました。月1回病棟および外来看護師を対象として、てんかんの病態、発作症候、発作時・発作間欠期の患者のケアなど、てんかんに関する包括的な勉強会を開催しています。

3)患者・家族・社会に対するてんかんの情報発信

日本てんかん協会等と協力してニーズにあわせて貢献してきました。具体的には、日本てんかん協会による一般市民を対象とした講習会、日本医師会の生涯教育講座などで講演をおこなってきました。

合同症例検討会(脳機能てんかん合同カンファレンス)
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脳波判読室(神経内科病棟)
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外来看護師の勉強会
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EEG/Epilepsy fellowship 募集
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